日本初開催 SXSW Music Meetup 説明会レポート
SXSW<サウス・バイ・サウスウエスト>MUSIC Meetupを日本初開催
SXSW Music部門トップが来日し、約100名の日本の音楽業界関係者と交流
アメリカテキサス州オースティンで毎年3月に開催される、世界最大級のカンファレンス&フェスティバル、サウス・バイ・サウス・ウエスト(以下、SXSW)。1987年のスタート以降成長を続け、昨年には106カ国から延べ417,400人を集めるビッグイベントとなっている。日本からの参加者も年々増加しており、2018年には1500人以上に。
近年はインタラクティブ部門が日本でも注目を浴びているが、SXSWの原点であるMusic Festivalに再び世界的な注目が集まっている。
去る10月30日、SXSW Japan Officeを務めるVISIONGRAPH Inc.は、SXSWのMusic部門トップであるJames Minorの来日に合わせ、SXSW2020に向けて日本の音楽業界関係者を対象とした説明会を、会場である渋谷EDGEofの協力のもとに初開催した。
30年以上続くSXSWは今でこそ世界的なフェスティバルとなったが、数十年以上前から日本のミュージシャンが参加しており、SXSWをより国際的なイベントにしている日本からの参加者に感謝したいという、Jamesの挨拶からイベントが始まった。
INDEX
・SXSW2019出演アーティスト、Steady Holidayのミニライブ
・様々な参加方法、それぞれのゴールがあるSXSW Music
・日本から世界へ。SXSWでそれぞれのゴールを掴む出演アーティストや担当マネジャーの想い。
・Showcaseへの出演だけでなく、SXSWから日本の音楽業界は学ぶ事が多くある。参加者たちの想い。
・SXSWに音楽 / 映像 / インタラクティブがある理由。今だからこそ求められるそれらを融合させる動き。
SXSW2019出演アーティスト、Steady Holidayのミニライブ
SXSW2019で注目を集めたロサンゼルスのシンガーソングライターSteady Holidayがこの日のためにショーケースを行なった。SXSW後にコーチェラの出演も果たした彼女の味わいのあるサウンドと優しい歌声に参加者たちは魅了されていた。
様々な参加方法、それぞれのゴールがあるSXSW Music
Steady Holidayのライブ終了後、SXSW Japan Officeの宮川がSXSWの概要ならびにMusic部門についての説明を行った。
アーティストがライブを行うフェスティバルのイメージが強いSXSW Musicだが、それ以外にも様々な参加方法がある。主なMusic部門の参加方法を目的別にまとめた。
カンファレンスセッションへの出席
Kim Gordon(Sonic Youth)による基調講演をはじめとするミュージシャンのプレゼンテーションや、音楽の配信方法や視聴環境やクリエイターの制作環境の変化、ブロックチェーン技術を使ったコンテンツ売買などテクノロジー関連セッションが集まっている。SXSW Music Official Showcaseへの出演
選出されたアーティストはSXSW期間中に1回約40分のステージを割り当てられてパフォーマンスを行う。※2020年の応募は既に締め切りOfficial Showcase Presenterとしてステージのオーガナイズ
レーベル、メディア、企業等がプレゼンターとなり、ラインナップを決めてショーケースを行う。SXSW Songs ソングライティングキャンプへの参加
ソングライターやプロデューサーのための、3日間のポップソングライティングキャンプ。SXSWのグローバルでクリエイティブなコミュニティメンバーとともに、Co-Writingを経験することができる。
様々なキャリアに応じて、クリエイターがそれぞれのゴール目指すSXSW。挑戦方法は10人いれば10通りある。
SXSW MusicのJamesも “SXSWにおける成功” についてはこう補足した。
「このアーティストがSXSWをきっかけにHITしたとはあまり言わないようにしています。SXSWはそれぞれのキャリア・ステージにおいてアーティストの助けになるプラットフォームです。単にSXSWに出演しただけでHITしたということはないと思っています。
著名になった出演アーティストとして近年あげるならば、LizzoやBillie Eilishが挙げられるでしょう。レベルやキャリアステージがバラバラに見えるかもしれませんが、SXSWはそれぞれのゴールをつかめる場所であり続けていきます。」
日本から世界へ。SXSWでそれぞれのゴールを掴む出演アーティストや担当マネジャーの想い。
第一部のパネルのテーマは、「SXSWショーケース出演について」。
SXSWのMusic Showcaseに2018、2019年出と出演したyahyelの池貝氏、ソニーミュージックの天野氏・石川氏、そしてJamesがパネルセッションを行った。
国内だけでなく海外もマーケットとして視野に入れ、オーディエンスの反応を見てみたかったと話すのはyahyelの池貝氏。海外でのリリースやPR効果を最大にする / レーベルやプロモーターを見つけるなど、自分たちの目的を具体的に設定するのが重要だと語った。
インデペンデントミュージシャンである彼らは、リソースに限りがある一方で、伝えたいことをストレートに伝えられるというメリットがある。どのようなサイズのステージでパフォーマンスをすることになろうが、何か想定外の出来事があろうが、アーティストとして最大限ベストを尽くすことを心がけた。また、Showcaseしていない時間も積極的にパーティなどに足を運び、様々なミュージシャンや参加者と交流を重ねた。SXSW期間中は途中からランナーズハイのような状態で、まるで“修行”のようだったと池貝氏は笑いながら振り返った。
「SXSWはLIVEではなくSHOWCASEという言葉を使っていることからもわかる通り、行く目的や自分たちの強みをストレートに説明できるかどうかが非常に重要」と、池貝氏はこれからの出演者達にエールを送った。
一方、ソニーミュージックでCHAIをSXSWに送り出したマネージャーの石川氏は、池貝氏の話を受けて、CHAIの1年目と2年目の出演の違いをこう語った。
「目的設定や準備不足もあって1年目は思い出作りのような形になってしまったかもしれません。しかし、その反省もあって2年目は事前に様々な海外のコンタクトパーソンと連絡を取るようにしました。結果、Burger Recordsというアメリカのインディーレーベルから声がかかって、彼らのステージにCHAIが出演するなどの成果へとつながりました。」
会場からの質問にも石川氏は繰り返し “準備” の重要性を主張していた。SXSWはきっかけにはなるが起点にはなりづらいと石川氏は話す。何よりも渡航前にパートナーを見つけるように動くのが成功の秘訣だと話した。
石川氏と同じく、ソニーミュジックの天野氏は沢山の若い日本のバンドをSXSWに送り出してきた。
「思い出づくりに終わってしまったとしても、SXSWから帰ってきたバンドメンバー達のライブは必ず変わってくる。強い良いライブができるようになる。SXSWから帰国後、今後どうしていくか?とチームで考えたほうが良い」と、バンドの育成面でも中長期の戦略の重要性を天野氏は語った。
“Keep Austin Weird” という開催都市オースティンの標語に共感を得たという天野氏。
オースティンに行くと、音楽の力を信じることができて毎回エネルギーをもらって帰って来れるという。
他に会場からの質問としては、出演するステージのコントロールの可否や、成功のコツ、VISAの申請やオースティンでの面白エピソードや失敗談などがあがり、会場は盛り上がって第一部は終了した。
Showcaseへの出演だけでなく、SXSWから日本の音楽業界は学ぶ事が多くある。参加者たちの想い。
第2部のテーマは「ショーケース出演以外のSXSW音楽部門への参加について」。
登壇者は、メディアSpincoasterを運営する林氏、TuneCore Japanの野田氏、CREATIVEMAN PRODUCTIONSの阿部氏がJamesと共にパネルセッションを行った。
2013年から参加している林氏は、自身の会社SpincoasterもSXSW期間中に思いついて起業に至ったそうだ。年数を重ねるごとに、どのステージ / どのメディアがキュレーションをしているパーティやステージが面白いのかがわかってきたとも話す。
「SXSWのShowcaseでは、日本と海外での受け入れられ方の違いをリアルに感じれるのが魅力だと思います。また音楽だけに留まらず、アプリやSNSなどテクノロジーの分野でのトレンドもいち早く知る事ができるし、音楽のカンファレンスセッションでは、2013年頃からプレイリストマーケティングの話がされていたりするので、刺激をいち早く受けたい人にはオススメです」と、Showcase出演以外のSXSW Musicの魅力を林氏は語った。
TuneCoreの野田氏もインタラクティブ・デジタル領域のセッションは非常に学ぶところがあるため、積極的に若い子やアーティストをもっとSXSWに送りたいと思っていると話す。
TuneCore Japanでは、SXSW期間中にイベント開催もしており、日本のアーティストを海外へと発信する場をどう作っていけるか?という事も自分たちのミッションと感じ、Spincoasterなどと連携してSXSW Musicにおける日本のプレゼンスを高めたいと話した。
「SXSWにはIT系の人も来ているので、ミュージシャンだけでなく、最先端のサービスを作っている人たちが同時に集まっている状況は他のイベントではあまり見ない。自分たちもSXSWで動画配信アプリのスタートアップと出会い、そのスタートアップがTikTokに買収されたため、TikTok日本ローンチの際にいち早くリレーションを取る事ができた。期間としてインタラクティブから始まってミュージックへと変わっていくので、街の変化だけみても非常に面白いと思う。」
野田氏はSXSWのジャンル横断型イベントの魅力を強調した。
クリエイティブマンの阿部氏は、ビッグエージェントがオーガナイズしているイベントで海外アーティストをチェックしたり、日本の新人アーティストの海外での反応を分析している。
「業界人の反応が肌で感じられるのが魅力。情報発信力が高い人が沢山来ている。
何か成功をつかむには現地のキーマンがいると非常にスムーズに進む」と成功のコツを語った。
SXSWに音楽 / 映像 / インタラクティブがある理由。今だからこそ求められるそれらを融合させる動き。
SXSW MusicのJamesは、SXSWで出会える価値についてこう話した。
「SXSWはMusicだけでなく、Film、Interactiveを含めた非常に懐の広いフェスティバルです。音楽だけでなくFilmやInteractiveの分野を超えた融合が生まれる場所であり、その点が他のフェスティバルと大きく異なります。様々なプラットフォーマーが来ています。またエージェント・出版・プロモーターも世界中から集まります。ノルウェーのミュージシャンがSXSWを通じて日本でのツアーが決まったような話もあります。」
本イベントの参加者もミュージシャンからプラットフォーマー、出版、テクノロジー企業などと様々であった。
パネルセッション終了後のミートアップも大変盛り上がり、SXSWで数年前からキーワードにしている”Convergence”という、業界の縦割りを取り払って人々やアイデアを混ぜていこうという姿を垣間見ることができた。
(画面左下より、TuneCore吉野氏、ソニーミュージックエンターテイメント石川氏、Spincoaster林氏、TuneCore野田氏、Steady Holiday、SXSW Head of Music James、SXSW Japan Office 宮川・高橋、画面中段左上よりyahyel池貝氏、ソニーミュージックエンターテイメント天野氏、SXSW Japan Office曽我)
SXSWとは・・・
毎年3月にアメリカ・オースティンにて開催される、音楽・映画・インタラクティブをテーマにした巨大ビジネスカファレンス&フェスティバル。2020年は3月13日~22日に開催予定、現在世界中から参加者を募集中。2019年6月より、未来予報株式会社/VISIONGRAPH inc.がSXSW Japan Officeに任命され、日本からのSXSW参加者に向けた様々なイベントを開催している。
SXSW: https://www.sxsw.com
SXSW Japan Office: https://miraiyoho.com/sxsw/