かぞくの未来|映画『箱の中の羊』未来予報リサーチ
©2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro.
社会と技術の変化から、物語の背景となる未来を考える
映画『箱の中の羊』の制作にあたり、初期脚本の段階から、物語の舞台となる少し先の社会・技術・暮らしについての未来予報リサーチを担当しました。
ヒューマノイドロボットやAI、個人デバイスなどの技術は、これからどのように進化していくのか。さらに、それらが社会へ普及したとき、人々の価値観や家族のあり方、法律や制度、日常生活はどのように変化するのでしょうか。
最新の技術動向や社会変化に加え、SXSWで議論されたAI、ロボット、人間性をめぐる論点などを調査。2030〜2040年頃までを視野に入れた客観的な未来予測と、そこから考えられる複数の「ある{かもしれない}未来」を、約50ページのレポートとしてまとめました。
社会像や家族像といった大きな背景から、登場人物が使うデバイス、画面のUI、素材、小道具の設定までを横断し、監督、制作スタッフ、美術チームへインプット。脚本やストーリー構成、未来の暮らしを表現する美術設定などに活用いただきました。
背景
少し先の未来を舞台とする物語では、未来の技術を登場させるだけでは、世界に十分なリアリティは生まれません。
その技術が、なぜ社会に受け入れられたのか。人々はどのような期待や不安を抱いているのか。法律や制度はどこまで追いつき、家族や人間についての価値観はどのように変化しているのか。
特に、人間に近い姿や振る舞いを持つヒューマノイドロボットが生活に入ることで、「家族とは何か」「人格とは何か」「人間と機械を分けるものは何か」といった問いが、日常の中に立ち上がります。
そこで今回のリサーチでは、技術の進歩だけではなく、人口構造、世帯構成、暮らし、住環境、家族観、法制度、社会の反応までを横断。これからの社会に生きる人々にとって、その未来がどのような日常になっているのかを考察しました。
実施内容
01 マクロ分析と未来予報
これからの社会と暮らしを描く
少子高齢化、単身世帯の増加、家庭における暮らしや消費意識の変化、建物やインフラの老朽化、AIや自動化、情報インフラの進化などを調査しました。
2030〜2040年頃までを視野に、客観的なデータや既存の予測を整理したうえで、それらの変化が重なったときに生まれる複数の「ある{かもしれない}未来」を提示。社会的・時代的な背景から、暮らしや具体的なシーンまでを段階的に描きました。
一つの未来を正解として定めるのではなく、制作チームが物語のテーマに合わせて未来を選択し、解釈するための素材としてまとめています。
02 ヒューマノイドロボットの技術と人格
商品、家族、人格を持つ存在の境界を考える
2023〜2025年時点のヒューマノイドロボット開発を整理し、身体制御、会話、学習、感情表現、安全性など、今後進歩が求められる領域を調査しました。
さらに、子ども型ロボットの研究や、ロボットの自律性、人格、権利をめぐる法制度、各国の議論、ケーススタディを参照。SXSW 2025で扱われたAIやロボット人格に関する議論も含め、少し先の未来における技術と社会の可能性を考察しました。
技術的に何が可能になるかだけでなく、人間がロボットに何を期待し、どこに親しみや違和感を感じるのか。法律上は所有物でありながら、暮らしの中では家族として扱われる可能性など、制度と感情のずれも整理しました。
03 デバイス・UI・マテリアル
未来の社会像を、画面に映る具体物へ落とし込む
少し先の未来に使われている可能性のある個人デバイス、パソコン、タブレット、画面内のUI、筐体や素材について追加リサーチを行いました。
人々はどのように機器を持ち、触れ、操作するのか。画面は残っているのか。AIとの対話は、どのようなインターフェースを通じて行われるのか。
奇抜な未来の道具を考えるのではなく、その時代の人々にとって自然な日用品として見えることを重視し、美術や小道具を検討するための情報をまとめました。
04 社会像を脚本と美術へ接続する
大きな変化を、人物やシーンの細部へ変換する
社会像、家族像、技術、制度を個別に整理するだけでなく、それらが登場人物の価値観や行動にどのような影響を与えるのかを考察しました。
同じ技術に対しても、世代や立場、経験によって、期待、拒絶、親しみ、違和感など異なる反応が生まれます。そうした反応をキャラクターの設定や物語の構成へ接続し、未来の社会が背景説明ではなく、物語の中で自然に感じられるための材料を提示しました。
©2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro.
見えてきた問い
家族であることは、血縁や身体によって決まるのか。それとも、共に過ごした時間や感情によって決まるのか。
人間に近い姿や記憶を持つ存在は、商品なのか、家族なのか、人格を持つ存在なのか。
人間がロボットに人格を感じることと、社会や法律が人格を認めることの間には、どのようなずれが生まれるのか。
子どもの姿をしたヒューマノイドは、成長する必要があるのか。成長しない存在を、人間はどのように受け止めるのか。
未来らしい技術や空間を見せることと、その時代の人にとって自然な日常を描くことを、どのように両立するのか。
未来予報が提供する価値
技術の進歩を、社会と人間の変化まで広げる
技術ロードマップだけでなく、その技術を社会がどう受け止め、法律や制度、家族観、倫理観がどのように変化するのかまでを考察します。
技術的に実現できる未来ではなく、人々が実際に暮らしている未来として捉えることで、物語の背景に厚みをつくります。
マクロな変化を、シーンの細部へ落とし込む
人口動態や社会制度といった大きな変化から、登場人物の価値観、会話、デバイス、UI、素材、小道具までを連続して考えます。
未来の社会像と、画面に映る細部をつなぐことで、説明しすぎなくても伝わる世界設定を支援します。
一つの正解ではなく、複数の未来を提示する
未来を一つに決めるのではなく、異なる価値観や社会条件から生まれる複数の可能性を提示します。
制作チームが物語のテーマや登場人物に合わせて未来を選び、組み合わせ、解釈するための素材を提供します。
技術と感情の間にある問いを見つける
未来の技術が人間の生活に入るとき、そこには便利さだけでなく、期待、愛着、恐れ、葛藤、喪失などの感情が生まれます。
技術の機能ではなく、人間との関係によって生まれる問いを捉えることで、物語やキャラクターを考えるための入口をつくります。
未来予報の映画・映像リサーチは、未来を正確に言い当てるための考証ではありません。
まだ起きていない社会を仮説として描き、その未来に生きる人々の感情や価値観、暮らしの細部までを考えることで、物語の中に存在する「未来の日常」を立ち上げるためのリサーチです。
本リサーチは、AOI Pro. / 分福からのご依頼により実施しました。
PROJECT TEAM
Project Designer
曽我 浩太郎
Futurist
宮川 麻衣子