SXSW2014ではロボットがテーマの中心であるセッションは他のテーマと比べて少なかったものの、別セッションの中に話題としてあがっていたり、IBM FOOD TRUCK(“SXSW2014:ロボット料理長から昆虫食まで?!”)が出店していたり、今後さらに注目の分野で目が離せません。

SXSWでは毎年IEEEがシリーズもののセッションを設けるのですが、今年のシリーズテーマは「Technology for Humanity」。そこにロボティクスが取り上げられていました。Googleが直近6か月の間に次々とロボット関連企業を買収したことはSXSWでもかなり話題になっていました。ロボット技術の話もそうですが“ロボットが社会に及ぼす影響”も議論の中心にあったと思います。その中からいくつかご紹介します!


●予報01: 働くロボットが人間に代わる労働力に?

AutodeskのCEO、Carl Bass氏のセッション「The Robot Revolution」では、ロボットが労働力の代わりになっていくかのお話をしました。産業用ロボットが製造業の雇用を減らしたことを認めて将来的にもこの流れが続くと見込んでいます。悲観的な話というよりは、人間とロボットそれぞれの特性を活かし棲み分けと共生をしていくべきだというのが彼の主張です。例えば、Bass氏によると、ロボットはいかなる時も力ずくでトライアンドエラーを繰りかえすことができる。何千もの違った方法で正しい方法になるまで実行し続ける。これは人間にもできますが、スピードでは勝てません。そういったものはロボットが担う方がいい、という意見。さらに「2050年までに人口は90億人に達しているでしょう。しかしロボットやスマートな機械は人間の数を上回っていると思う。」とBass氏は付け加えています。

そう言われると仕事なくなっちゃうじゃん!と言いたくなるところですが、オートメーションによって失った仕事は子どもに就いてほしいと思えるようなものか?という質問を投げています。
同時に、ロボットが私たちよりも得意ではないことは何かを挙げています。以下のようなもの。

近年、1990年にはデトロイトのBig Three automakers(General Motors, Ford, Chrysler )が360億ドルの時価総額で120万人の雇用に対し、2012年ではシリコンバレーの3つのトップインターネット企業(Apple,Facebook,Google)は7900億ドルの時価総額でたった13万人の雇用であることを例にし、インターネットが起こした社会変革と比較し、今後ロボットが労働力を担うことによって社会や経済に構造的な変化が起きることを示唆しました。
Bass氏はロボットの台頭で仕事がなくなることについては楽観的で、人間にとってはむしろ朗報であると主張しています。「私たちの創造性と想像力によってロボットとの共生は可能である」と述べています。

オートメーションの流れは止まらずにすでに直面すべき課題…未来予報研究会でも冊子「未来予報」でこの内容に触れています。去年読んだブリニョルフソン著「機械との競争」にも人間と機械のそれぞれの特性を活かし協力していくべきだというようなことが書かれていました。技術開発を進めながらも、人間とどう共生していくかの議論やアイデアを進めていくことが大変重要だということがわかります。


↑飛び入り参加したR2-D2とCarl Bass氏

参考:
http://blogs.wsj.com/atwork/2014/03/10/why-the-rise-of-the-robot-workforce-is-a-good-thing/
http://meredithmagstudies.wordpress.com/tag/carl-bass/


●予報02: ロボットを低価格化せよ!

2011年Google I/OでGoogleが発表したキーワードである「Cloud Robotics」。膨大な計算資源をネットワークに持たせ、知識も蓄積しておく、さらにリアルタイムの情報を取得できることで“状況判断”ができるようになり、知能化が加速できるという概念です。これで起こるのはロボットの低価格化。
Cloud Robotics: Instant Scalability & Capability」ではCloud Roboticsの未来が話されました。現在日本でもクラウドソーシングが一般的になってきましたが、それの先を行く(?)ロボットによるクラウドソーシングならぬ“ロボットソーシング”によってロボットがチームになって課題を解決するようになるのではないかという話でした。確かに、ロボットが個々に個別の案件にカスタマイズされて対応するより、補い合って対応する方が低コストでできそうです。
他のロボットのデータを引き継いで手術や顧客サービスを再現することができるし、Googleの自走カーに至ってはリアルタイムの交通データから最適ルートを簡単に出せる…SFの世界です!App Storeみたいにロボット用のアプリをダウンロードしてすぐに機能を追加できるようになるかもしれません。
Internet of Thingsの発展と比例するこの分野も要注目です。

IEEE Technology for Humanityシリーズであったセッション「Welcoming the Robot Workforce」では上記の予報01で取り上げたロボットが労働を奪うかというテーマをについて話し合う中で、産業用ロボットのbaxterを例にとりあげていました。baxterの最大の魅力は通常の産業用ロボットに対して5分の1くらいのコスト(2万ドルくらい)で導入できること、そして難しいプログラミングではなく文字通り“手取り足取り”で仕事を教えられることです。この価格帯であれば中小企業が導入しやすいです。

Baxterはうまく仕事がいってるかいってないかなどを表情で表現することができます!

先週のソフトバンクの発表でもロボットの低価格が話題になっていましたが、ルンバに代表されるコンシューマー向けのロボット開発がどんどん加速しそうです。ロボットを利用したい人がすべてリテラシーが高かったり、高い金額を払えたりする訳ではないので、車の歴史がそうだったように、手に入りやすく使いやすいというのは今後のロボット普及には必要不可欠ですね。


●予報03: 自分のための相棒ロボットと暮らそう

AI & Robotics: From the Labs to the Living Room」に登壇していたAnkiのCo-FounderのHanns Tappeiner氏。2013年のWWWDCのKeynoteに登場し有名になったAnki Driveというゲーム。これは知能を持ったリアルのミニカーを走らせながら、仮想上で武器を使って攻撃しながらレースを楽しむというゲーム・・・テキストにすると説明が難しいのでこちらの映像をご覧ください。

今までは主に軍事用として発展してきたAIやロボットですがコンシューマー向けにアシストやエンターテイメントを与える存在になってきています。ルンバやSiriにこのAnki Drive、生活の中に身近になってきているのが現在です。自分だけのAIデバイス/ロボットをポケットの中に入れて出歩く日も近い将来現実になっているのではないかというのがSXSWから感じ取れました。

IEEE Technology for Humanityシリーズの「Building Your Own 21st Century Robot」ではインテルのフューチャリストであるBrian David Johnsonが21世紀のパーソナライズロボットについての話をしています。3Dプリンターで自作できるロボット「Jimmy」、オープンソースで機能を開発しシェアすることができるという、一般の人がコンシューマー向けのロボット開発に参加できる試み。自分で3Dプリントできない部分はキットとして購入できるそうです。21st Century Robot Projectという開発プロジェクトで2014年中に1600ドルの予定で発売したいということで、期待が高まります。

Jimmyについて語るBrian

歩くJimmyはこちら!すごくかわいいです^^

コンシューマー自らが機能を開発するというのがとても素敵なコンセプトだと思いました。今は歌を歌ったり、代わりにTweetしたりできるそうですが、どんな機能が追加されていくのか興味深いプロジェクトとなっています。

どうせ3Dプリンターで出力するならば、私なら青色のネコ型ロボットを…うひひひ…、いかん、また妄想の世界へ行っていました。


Googleがロボット開発への本気を出している中、ロボット開発が確実に次のフェーズへ行っていることがSXSWからもわかります。ロボットに夢を見るのもいいのですが、少なくともアメリカはできるところ、必要とされるところから着実にロボット開発を進めているように感じました。それが不恰好でもまずは作ってアウトプットしてみる。確かに誰も高度なAIやロボットと暮らしたことはないのだから、できるところから作ってみて一緒に過ごしてみて修正していくというプロセスが重要なんだと思います。未来への投資を渋らず、ロボットベンチャーや研究室に対して、小さな積み重ねが始められる環境を用意しないと、2,3年後にはロボット大国日本は幻になっているのかもしれないと思いました。

それから、ロボットは相棒かライバルかという話ですが、予報01~03を見ていただければ、結局ロボットを作るのは人間だということ、私たちがその進歩の方向をどう制御するかが、その答えになっていることが見えてくるかと思います。
人間と共生する、お互いを補完し合うように設計、法律の整備、倫理、教育していけば相棒になるし、その反対のビジョンで設計すればライバルどころか敵になるということで、ロボットを開発する上で議論し合うことは何よりも大切なことだとSXSWでは感じました。