エコの未来:鍵を握るのはファッションと家族農家、そしてジャーナリズム(SXSW ECO2013>>2014)

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秋ですね。今年もSXSW ECOの季節がやってきました!3月のSXSW本家の情報に比べ、SXSW ECOについての情報は少ないと思いますので、2013年の参加経験から2014年のSXSW ECOの見所をまとめてみました。(絶賛開催中ですが参加できていないのであくまで予想です...涙)

持続可能な社会を目指す社会起業家のコミュニティ「SXSW ECO」

SXSW ECOは、世界中の社会起業家(ソーシャルアントレプレナー)や、社内起業化(イントレプレナー)が集まる3日間のイベントです。イベントの形式は「セミナー」「ミートアップ」「ハッカソン」「アワード」等、SXSWとほぼ同じで、より社会的な事業・活動に特化をしています。

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2014年のテーマは....

・Advocacy & Policy (2013:Policy & Activismから進化)

・Behavior & Design (BehaviorとDesignが統合)

・Big Data & Technology(2014から新設)

・Business & Finance (2013:businessから進化)

・Energy・Food Systems(2013:Food&Agriculture)

・Health & Education

・Land & Water

・Smart Cities(2014から新設)

と、時代とあわせて変化しています。

2013年では、SXSW 2014のレポートでもお伝えしたSharing Economyビジネスを実践している方達のKeynoteが印象深かったですが、定着してきたからかあまり今年はここらへんの話題は多くない気がしましたし、昨年に比べるとだいぶViralやMovementと呼ばれているような"広め方/プロモーション系"は全体的に少なくなっている気がしました。ここらへんの変化も踏まえ、2014年への期待をお伝えできればと思います。

予報01:”ファッション”を進化させなければサスティナブルな社会は訪れない

SXSW2015でもスピーカーを大募集していた”ファッション”に関しては、衣服向けの3Dプリンターやコンテンツマーケティング/ストーリーテリングの概念が広がるつれて、具体的なセッションが若干増えている気がします。

まず前提として、ファッション業界は産業汚染が多いと言われている業界。この業界の構造を変えない限り、持続可能な社会を作る事は難しいと考えた何人かの起業家たちが集まりました。

「ファストファッションの本当の値段を知っていますか?」

大量に作られる ー 長持ちしないからすぐに捨てられる ー 実際の製産者の労働環境は劣悪 ー 価格が安いためサイクルが早くなる ー

この悪いループを引き起こすファストファッションは果たして本当に「安い」と言い切れるのでしょうか?
とメスを入れるセッションを行うのは、Zady Co-founderのSoraya Darabi。

「なぜ食べ物では生産者を明確にするのに衣服ではその文化が無いのか?」という疑問からはじまったZadyは、画像投稿とGPSを利用した飲食店の口コミアプリ「Foodspotting」のCo-founderがオープンしたECサイト。その製品の背景・ストーリーが伝わるUIが実現されている、まさに「StorytellingするEコマース」。

これは、透明性を持った納得できる素敵な製品をユーザーに提供する事で、ファッションを持続可能にする一つの手段となっていくと考えられています。(ECの未来についてはこちらの記事も是非チェックを!)

衣服用3Dプリンターでかかるエネルギーの無駄を省く

衣服の3Dプリンターはミュージシャンが着るような複雑なデザインを出力するだけでなく、快適性と耐久性に優れたデザインを実現するため等、様々な活用方法が期待されています。

Electroloomは、衣服製造のサプライチェーンをなるべく少ないエネルギー総量で実現することをコンセプトにしている3Dプリンターです。

例えば、日本で作られたデザインをアメリカにいながらWEB上で購入し、自宅の3Dプリンターからその洋服を出力することができます。

オーバーに言うと、今までであれば生地を世界各国から日本に取り寄せデザインした後に縫製は海外に任せて最終的に日本に戻してもらい、アメリカに送付をするプロセスが必要でしたが、その無駄な移動が一気に無くなる...未来のような話ですが、そう遠くないうちに実現されることになりますね!

彼らはプリンターのハード部分だけでなく、オープンなプラットフォームとしてユーザーが型を販売できるようなソフト部分も視野に入れながら2014年末に向けての開発を進めているそうです。

予報02:”持続可能な食糧”の未来は、家族農家が握っている

2014年は国連が設定した「国際家族農業年(IYFF2014)」です。

国際家族農業年(IYFF2014)は、特に農村地域における飢餓や貧困の撲滅、食料安全保障および栄養の提供、生活改善、天然資源管理、環境保護そして持続可能な開発を達成するうえで家族農業や小規模農業が担う重要な役割について、世界の注意を喚起することにより、その認知度を高めることを目的としています。食料不安に苦しむ人々の70%以上が、アフリカ、アジア、中南米、中近東の農村部に住んでいます。彼らのうち特に小規模農家が、天然資源、政策や技術へのアクセスが不十分な家族農家です。貧しい家族農家は、適切な政策環境が効果的に整えられれば、直ちに生産性向上の可能性を展開することができることが、これまで多く証明されています。(国際連合食糧農業機関より引用

カテゴリ名が「Food&Agriculture」から「Food Systems」に変更になった事からもわかる通り、どのように食糧を持続可能にする仕組みを作れるかが問われています。

”オーガニック=サスティナブル”というわけではありません。

生産・消費までを考えると、その地域での新たな雇用創出やネットワークづくりに貢献できる家族農業の生産・消費サイクルはとても有効なので、うまく家族農家の収益をあげる仕組みをつくることが、持続可能で安全な食糧と環境の保全に繋がると考えられています。

そのノウハウを持っているのが、2014年にFast Company社に食糧分野でのイノベーティブな会社10に選ばれたFairlifeです。獣医出身の起業家が先導をとりながら家族農家の組合で作られたFairlifeは、「伝統的な牛乳をより少ない砂糖で高栄養価を実現できた新しいミルク」を提供しています。

その強みは、特許を取得している濾過技術と、獣医出身ならではの牛へのケア、そして地域組合ならではの周りの地域・地球への配慮、そしてトレーサビリティの確保。尚かつ、それでもってブランディングもしっかりできているのがすごいところですね。彼らのノウハウを聞けるチャンスが今年はありそうです。ちなみに、「SXSW2014レポート:食の未来」でご説明した昆虫食も相変わらず期待は大きく、Kickstarterで成立した団体を中心としたセッションが決まっているようです。

予報03:データと技術が持続可能な社会を促進する

当たり前ですが、生態系を保つ=自然のまま放置するということではありません。状況を把握しながら、適切な手入れをしていく必要があります。その状況の把握にウェアラブル端末やドローンを用いた計測が試みられています。

今までアナログに行っていた事がIT化されるだけで、どれだけの可能性の広がりがみえてくるのか。Big Data & Technologyカテゴリが新設された理由とその期待を想像するととてもわくわくしますね。

最近はデータを可視化しわかりやすく伝える「データジャーナリズム」も広まってきましたが、このデータに加えてリアルタイムに市民からデータをクラウドソースに収集し分析するという「センサージャーナリズム」も広がりつつあります。

2012年の西コロラド干ばつ後、地域のラジオ局と地域住民の双方で協力して行われた気候変動の調査・発表「iSeeChange」はセンサージャーナリズムの事例です。NASAが毎日収集するデータは17TBとも言われておりますが、本当にこのデータは研究者の間だけで出回る事が有用なのかとNASA自身も課題を感じており、その計測データを市民にどうアクセスしやすくするべきか?市民と一緒にどう使っていくかを考えるワークショップもとても気になっています。

うーん、オースティンに行きたくてウズウズしますね。今回ご紹介はできませんでしたが、特に「Business & Finance」のカテゴリーは社会起業家にとっての大きい課題だと思いますので、色々と追っかけてみようと思います。

どなたか、SXSW ECO2014に行ってる人、いろいろ聞かせてください!!