SXSWセッションのカテゴリにはしっかりと”Health and Business”が設けられていて、去年から引き続き注目分野となっておりました。今年の基調講演の一人に23andMeのCEO、Anne Wojcicki (遺伝子情報および発病確率情報を提供)が登壇するなど、デジタルヘルスと呼ばれるこの領域は大きなビジネスになるという期待感でいっぱいです。
私たちの健康維持のためにはどんな未来が待っているのでしょうか?


●予報01: 遺伝子情報解析で病気を予防!

わずか99ドルで自分の遺伝子情報を解析できるという”23 and Me”が提供するキット。
https://www.23andme.com/
わずかな唾液から、自分のルーツ、大腸がん、乳がん、糖尿病などになる確率などがわかるそうです。Googleによる出資を受けて2006年に創業し、順調にデータを集めてきたサービスでしたが、2013年11月からアメリカ食品医薬品局(FDA)により現在は診断結果の提供を差し止められています。
理由としては診断内容の精度に問題があったり、利用者自身が検査結果の内容を十分理解できずに逆に健康被害が起きたということらしいです。

今年の基調講演スピーカーの一人として、CEOのAnne Wojcickiが登壇しました。
気迫ある講演はこちらをどうぞ!

そもそもこれほどデジタルヘルス分野が注目される背景としては、みなさんご存知かと思いますが、アメリカが抱える深刻な医療制度の問題にあります。自由診療が基本のため高額な医療費払いで自己破産する人も…。そこで2010年にオバマケアと呼ばれる医療改革が始まりましたが、保険制度の立て直しとともに重要視されているのは、ITの活用によって医療コストの削減!つまり効率的に医療を行うことと、国民一人一人が病気を予防すること。やはり病気にならないことが一番の節約になりますよね。
そういう意味でデジタルヘルス分野は非常に重要な分野であります。SXSW2013では”Quantified Self=自分を定量化する”がキーワードでした。去年はNike Fuel BandやUP by Jawboneに代表されるように、“健康管理×ウェアラブル”で自分の活動記録をベースに健康管理をしていこうという潮流でした。
今年はさらにインナー、自分の持つ遺伝子から病気のリスクを洗い出していこうという流れでしょうか。日々の記録だけでなく、予めどういった病気になりやすいかが把握できれば生活の見直しも具体的にできそうですね。ただし、結果については精神的な影響が大きいので、診断内容のミスや利用者の誤解が生まれないようにサービスとしての細心の注意が必要であることも確か。現在はFDAの基準を満たすよう進んでいるようですので、遺伝子検査がもっとラフで身近なものになる日も近いですね。


●予報02: ARとロボットで手術を!

When AR Meets the OR: Robotics & AR in Surgery」より

手術支援ロボットのIntuitive Surgical社が提供するda Vinci Surgical System。先ごろ第4世代となるda Vinci Xiを開発しアメリカ食品医薬品局(FDA)から承認を受けたとのこと。このセッションはARとロボットによる手術、遠隔治療の未来が語られました。
内視鏡カメラとアームを患者に挿入し、術者は3Dモニターを見ながらヴァーチャルに遠隔操作で装置を動かす。繊細な手の動きをロボットに忠実に再現して手術を行うというシステム。
患者への負担が少ない手術法でアメリカでは広く一般的に受け入れられていますが、ちなみに現状日本では「根治的前立腺全摘除術」のみ健康保険の適用範囲だそうで、それ以外は自由診療となり全額自己負担。一部の裕福な人しか手術を受けられず症例が少ない、かつ技術の習得に少し時間がかかるため導入したがる病院が少なく、日本では普及していないようです。

セッションの中で語られたのは、ロボット手術に不可欠であるのは、
・可能な限り小さく
・いかに曲線の中で動かすことができるか
・患者個々に最適な手順で柔軟に手術できるか(ワンパターンではだめ)
だと言っています。
例えば、人工内耳インプラントカプセル内視鏡、電極カテーテルは患者に最少の負担で体内に入り込むことができます。最近は超音波を使って患部を切り取ったりして従来の開腹手術より負担が少なくなるような手術法が一般的になってきている背景があります。
この他にも、3Dプリンターを使って手術前に患者さんの患部のモデルをつくり、オペ前により詳細なイメージトレーニングができるようになってきているそうです。

外科の未来としては、カテーテルやカニューレ(心臓、血管、気管、または切り口や傷口など管状の部分に挿入する、やや太めの管)も患者個々に合わせたものを3Dプリンターで作成しロボット手術に及ぶというようなことが考えられているそうです。すごい!こういった繊細な技術は日本のメーカーが得意なイメージがあります。この辺の分野にどんどん進出していくべきではないかと思いました。


●予報03: 2030年 human being2.0

Scanadu CEOのWalter De Brouwer氏が「Smartphones to Healthphones: A Dr. in Your Pocket」というテーマで話しました。
まずはScanaduとは何か映像をご覧ください。

スタートレックに出てくる医療用トリコーダーを実現しようというスタートアップです。彼はこのセッションの中でScanaduの2030年までの今後16年間の未来ビジョンを語りました。

少し抜粋させていただきます。かなり短い時間の中で語られたので、すべて把握しきれませんでした。。。

2015 >> Scanaduが199ドルで消費者の手元に/家族の健康状態を管理できるようになる
2016 >> リアルタイムに自分の健康具合を変えていくことが容易になる
2017 >> トリコーダーがチップになりすべての携帯電話に内蔵されるようになる
2018 >> トリコーダーが(温度計に取って代わり)各家庭に配備される/健康人口の調査やユーザーデータの収集をEMRの代わりにやる
2019 >> 自分のコンディションを把握するために年間購読料を払うようになる/臨床試験のために自分の健康データを売ることも考えられる
2020 >> 患者と消費者の差がなくなる全員が消費者/緊急ダイヤル911はまずトリコーダーにデータ確認しにいく
2021 >> ウェアラブルがすべてアンダーウェアラブルになる/インプランタブル型、皮下型、タトゥー型、注射剤型
2023 >> 双方向のインプラントになっている/悪いところを診断するだけでなくある程度の治療が可能
2024 >> 内部共生元年
2025 >> 薬はもはや単一機能ではなく多機能である
2026 >> いまよりはるかに少ない労力ですべてやることができるようになる
2030 >> 人類Ver2.0(=不死の体) by レイ・カーツワイル

Eron Muskのように熱い方だったので、医療分野のイノベーションをひっぱっていく重要人物ではないかと思いました。


去年も注目の集まった医療ヘルスケア分野でしたが、去年まではウェアラブル機器で健康管理止まりだったのですが、こうしてまとめてみるとより概念がインプランタブル(埋め込み型)になってきているのがわかります。
健康のためやよりよく生きるために、プチサイボーグ化というのはあながち遠い未来ではないのかもしれません。ではそういう未来には何が必要なのか、非常に考えさせられるテーマでした。