食卓の未来:日本発IoT×農業から培養肉まで(SXSWECO2015)

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SXSW ECO2015には、「食卓の未来」につながるセッションが多くありました。

SXSWでもFoodは大きなテーマの一つですが、バイオテクノロジーがどんどん民主化していく(一般層にもバイオハックとして広がる)につれて、食分野にまつわる産業もどんどんアップデートされていく兆しを見せています!まず、食に関連して私たちが直面している大きな課題のおさらいからしていきましょう。
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課題1. 2025年には世界人口の3分の2が水不足の状態に(FAO 国際連合食糧農業機関より)課題2. 人口爆発による世界的な食糧危機…そして食品価格が高騰(外務省 農地争奪と食料安全保障より)
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この突きつけられる重たい課題…上の資料にもあるように、水不足が農業や畜産業に与えるインパクトに加えて、人口爆発から来る食糧危機は今私たちが実感している以上に深刻な問題になりそうです。目をそらしたくもなりますがコレを解決しよう!と、アイデアを持っている人から製品を作りあげている人まで多様な領域が交わりフラットにネットワーキングするのがSXSW ECOです!

昨年・一昨年についてはこちらもご覧下さい。
SXSW ECO : サスティナビリティの未来(2013>>2014)---

それでは、私達の【食卓の未来】をつくる種を予報としてご紹介していきたいと思います。

今回のSXSW ECO2015でも、こうした問題を解決しうる2チームが日本から参加しています。

まずは、動画からお先にどうぞ!

JAPAN @ SXSW ECO 2016

Kisvin Science /SenSprout

Kisvin Scienceが開発するのは、植物を傷つけずにセンシングできる低コストな樹液センサー。農家が自分自身の畑の状態や特性を細かく理解することができるようになる、未来の農業を助けるIoTシステムです!現在はコンサルタントや研究者のような限られた方で担っている部分も、このセンサーシステムがあることで、畑の中の多くの場所で樹液の流れの違いを農家自身で知ることができるようになり、持続可能かつ効率的に、そしてより美味しいワインを自分自身で作れるようになってきます。もしかすると...ワインのブランドを表す産地表示や、味の表現なども変わってくるかもしれない?!そんな妄想が勝手に広がってきました。SenSproutは、Todai to Texas2016でも話題になったインクで基板を作る事が出来るAgICを使い、低コストで土壌の状態を観測できるようになるキット。今まで計測していた以上の密度で、更に広範囲に土壌の状態が観測できるようになると、農業や森林保護だけでなく土砂災害の解決にも繋がります。

KAKAXI

オースティンと日本をベースにしているスタートアップです。
生産者と消費者をつなぐIoTでバイスとアプリを作っています。詳しくは次の項目で説明します!


予報01:”つくる”と”たべる”が近くなる。

・食をコミュニケーションで変える「KAKAXI

飲食店で生産農家の名前を見るようになってきました。しかし、私たち消費者はいつも食べている野菜がどういう風に育っているかを知らないし、生産農家の方々も作った野菜がどう食べられているかを知りませんそれをカメラ付きのセンシングデバイスとアプリケーションで繋ぐのがKAKAXIです。

生産者が自分で作った野菜がどう食べられているのかを知ることはモチベーションの維持にも繋がりますし、アメリカは日本よりも会員制の農業(CommunitySupportedAgriculture)が普及しているらしく、意識の高い消費者にとってその野菜の育ち方が確認できたり、会員間でレシピを投稿してお互い盛り上がるサービスを楽しむ文化が根づきそうですね。Internet of Thingsが広がることにより、このような"作る人と食べる人を近づけるサービス"は、様々な分野でもっと生まれてくるでしょう。

・家で野菜を育てる文化を取り戻す「Back To The Roots

キッチンの横でマッシュルーム栽培できるキットを作っているフードスタートアップ「Back To The Roots」。
彼らの思い描いているビジョンは「もう一度自分で食べるものを自分で作る世界を作る」です。
“コーヒーのカスからキノコが生える”という大学教授のヒトコトに興味を覚え、自分達でコーヒーショップからコーヒーのカスを集めキノコを栽培していましたが、そのキノコがオーガニックスーパーWholeFoodsMarketで大人気になり、一般消費者向けに栽培キットを開発したそうです。
彼らはこの後、バイオ炭を活用した排水や植え替えの必要無いシリアル缶で育てるハーブキットや、魚を飼育することで自然と栄養を補完しあってくれる水耕栽培キットなど、続々新プロダクトを開発しています。なんとすべてFDA(アメリカで安全性を評価する機関)認証済みかわいいデザインは子どもにも大人気で、ソーシャルメディアを活用してユーザーのフィードバックを近くで聞きながら、事業を成長させています。バイオテクノロジーとデザインがもっと近くなることで、このような製品も沢山生まれてきます。一見食べるのが怖い…と思いがちなジャンルですが、ユーザーと一緒にブランドを作れているので、全くそんな怖さも感じなさそうです!

予報02:肉やチーズ…見た目と味は一緒でも作り方が変化する

昆虫食だけでなく、培養肉も人口爆発による食糧危機を逃れる一手として注目をされています。また、科学の力を使ってもともとの動物由来ではない食品を新たに作りだす動きはちょこちょこ聞いたテーマです。

・培養肉版ブルワリー”CARNERY”建設を目指す?! 「New Harvest

SXSW ECO2015のキーノートの一人Isha Datarが立ち上げたNew Harvestは培養肉の研究をしている団体です。

大規模な畜産業は、輸送や餌のコストから牧場の敷地、食肉に使われず廃棄される部分等…沢山のロスが生じており環境破壊に繋がっているが、培養肉ではそれを解決することができるとIshaは話します。
また培養肉は栄養価の高い肉を作り出すこともできるため、昆虫食同様に栄養面でも高い評価を得ているようです。
彼女達の見解では、バイオテクノロジー分野のハードウェアとプロセスの革新によって培養肉の製造コストは下がる一方、人口爆発をはじめとする環境要因で普通肉のコストが上がり、普通肉の価格は2020年から2030年の間に普通牛肉よりも培養肉の方が安くなり、2030年代に豚肉を、2040年代にはチキンをも越えて低価格になっていくと予想しています。

そんな彼女達のビジョンは、ビールを造るブルワリーのように、肉を造るオシャレな"CARNERY"を作ること。また、自宅でパンを作るキットのような家庭用のCARNERYも造りたいと話します。会場からは、ユニークな彼女のアイデアに価値をを認めながらもネガティブな意見もありましたが、彼女は可愛らしい笑顔で返します。

「100年後、200年後…いったい自分達は何を食べているかを想像することから始めててください…。また、その怖さの原因は技術に対してではなく、新しいものに対する恐れなのではないですか?あなたは昆虫を食べますか?それとも...やっぱりお肉が好きですか?」と。とても面白いキーノートでした。

・乳製品ではないチーズ「Kite Hill Cheese

Kite Hill is at Whole Foods Capitola!

Kite Hillさん(@kitehillcheese)が投稿した写真 - 2013 4月 21 11:22午前 PDT

世界各国で広がる畜産業への依存体制を軽減するために、チーズやヨーグルトやミルクと言った「乳製品」をナッツから作っているKite hill(カイトヒル)。ビーガンフード(肉を食べないベジタリアン料理)は日本でもよく聞くキーワードになってきましたが、美味しく健康な食品ということでWholeFoodsMarketでも同社の製品はセレブ達に大人気だそうです。

この乳製品を作っている会社kite hillとともに、「明日のチーズバーガーを作ろう」というユニークなパネルセッションを行ったのが、植物から肉を作り出そうとしている会社「Impossible Food」
彼らは一時期Googleからの買収の噂もありましたが、2015年それをも越える巨額の資金を調達したニュースが入っています。このように、味や見た目は変わらなくても生産方法を変えることで私たちの食卓を持続可能にしていくフードスタートアップが出てきています。この分野はこれから目が離せませんね!

さて、2025年ー食卓に並んでいるものはどう変化しているのでしょうか?想像して欲しいのは、私たち日本人の食卓だけではありません!2025年、新興国の食卓は私たち日本人の食生活を飛び越え、より最先端な健康食になっているかもしれませんよ。

やっぱりオースティンに行ったらタコスとBBQを食べなきゃ始まりません!

やっぱりオースティンに行ったらタコスとBBQを食べなきゃ始まりません!

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