なぜ未来予報士はSXSWへ行くのか?

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SXSWとはビジネスのイベントである

SXSWとは?と検索すると“音楽祭、映画祭、インタラクティブフェスの大規模イベント”、“フェスティバル、カンファレンス、コンペティション”、“スタートアップの登竜門”といった言葉が並びます。どれも当たっていますし、私も最初はそうだなと思っていました。SXSW2014を締めくくるMusic KeynoteではLADY GAGAが講演を行いましたが、その前にSXSWのマネージングディレクターであるRoland Swenson氏が挨拶の中で次のように語りました。

SXSWは単なるパーティやフェスティバルではなく、そのコアはビジネスのイベントであるということです。カンファレンスやパネルディスカッションなどたくさんのプログラムがあって、そこでは未来について話し合う場があります。・・・座って話せるパーティだってあるしね(笑)- Roland Swenson

SXSWのコアはビジネスイベント。1000を超えるセッション、パネルディスカッション、ミートアップ、メンター、パーティ・・・すべては自分のビジネスを生み出すため、育てるため、花開かせるために参加するのだということを、改めて思い起こさせる言葉でした。

どれだけの人と出会い、情報交換・意見交換して刺激を与え合い、時にはパートナーシップを組み、ビジネスを少しでも前進させるられるかは自分にかかっているというのを、現場にいると痛感させられます。10日間は長いようで短く(Interactive,Musicはそれぞれ5日間ずつ)、世界中から集まった参加者たちは1分でも1秒でも無駄にできません。だからこそGive and Takeの空気が露骨に出ていて、与えられるという姿勢では端から相手にされません。

コミュニケーションの一環として無駄話もありますが、その辺の緩急がうまいです。ビジネスチャンスもあるけれどきちんと自分の武器を揃えていかないと厳しい現場だなと毎年思います。ライブやパーティといった一見ノリノリで優しい楽しそうな面構えをしておいて!!ヒドイッ!いや、すいません私の勉強不足です、と思うのです。

“様々なフェーズ”のビジネスが集まって切磋琢磨するというのがSXSWの真の姿だと私たちは捉えています。

研究やアイデア段階のものから資金調達、そして大規模プロモーションしているものまで。

スタートアップだけ、大企業だけ、という囲いがない、あくまで全員がフラットに意見交換しています。

みんな気軽に未来の話をして、未来がこんな風になると自分は思うから●●なビジネスにしていきたいと、表明し合っている。でも「Better world」をつくっていきたいという思いを共有しているように感じます。こういう状態がSXSW独特の空気を醸成しているのでしょう。

SXSW Interactive、Film、Musicではなくて「インタラクティブビジネス」「映画ビジネス」「音楽ビジネス」と、ビジネスをつけると途端にSXSWが何なのか捉えやすくなりませんか? 

テクノロジーを使ってBetter World(より良い世界)をつくるのだ!

これからシリーズで紹介していきますが、より良い世界にするために、新旧テクノロジーを利用して知恵を絞ってビジネスを生み出そうという人がたくさんいます。

食、エネルギー、高齢化、人口、車、コミュニケーション…たくさん解決すべき課題がありますが、それに前向きにテクノロジーを利用しようとします。というかもうテクノロジーで解決するしか道はないのかもしれません。

しかしメリット・デメリットは必ずあります。それをパネルセッションで登壇者同士が、Q&Aで登壇者と参加者がお互いに意見を交わすというのがSXSWです。

例えば今年のセッションのテーマのひとつが「Social and Privacy」でした。
相反する~!これは相反するよというテーマです。利便性と安全性のバランスの話はどのテーマでも解決すべき課題として挙げられていました。新しい技術に群がるだけではなくて、そこに起こる弊害もきちんと話すというSXSWの大人な面も垣間見ることができます。

ただしそこで答えが出る訳ではありません。簡単に解決できる課題ではないということもありますが、いろんな視点から見たメリット・デメリットの意見を交換しあうというのが重要だと捉えているからではないかと思います。

あなたに見えていなかった良い点・課題点が私には見えてる、それをシェアしよう。
大袈裟かもしれませんが、集合知ってこういうことでしょうか。

それからSXSWでは科学技術を特に推進しているように見えます。毎年NASAがセッション登壇、トレードショー出展、独自ラウンジを構えるなど、積極的に参加しています。去年はGaming Expoの会場隣りに、2018年に打ち上げられる予定のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(ハッブルの後継機!)1/1スケールのモデルを展示して、存在感を出していました。

今年もNASAを始め、AIやロボティクス、Connected Car、Connected Healthなど研究段階のテクノロジーがセッションテーマにたくさん挙げられていました。科学技術の振興・推進だけでなく、その弊害や危険性にも目を逸らさない姿勢が見えます。スノーデン氏が告発後の初のテレカンファレンスがそのひとつでしょう。アメリカでのNSA問題の注目度の高さを目の当たりにしました。

Better Worldをつくるためのイノベーション。それを起こすには叡智とテクノロジーだという気概がSXSWには表れています。 

スタートアップ=インディーズアーティスト!

Interactive、Music、Filmと部門が分かれていますが、基本的にどれも同じ構造であることに気が付きます。

Interactiveではスタートアップがピッチを行ったり、トレードショーで自分たちのサービスを紹介したりします。

Filmではクラウドファンディングで制作資金を集めたような自主制作映画が街の映画館で上映されます。

Musicでは有名人気アーティストもたくさんライブをしますが、多くのインディーズアーティストやアメリカ公演が初めての海外アーティストが昼夜問わずライブハウスで演奏しています。

ここから有名になっていくサービス、アーティストがたくさんいるそうです。

MusicではアーティストがライブすることをShowcaseといいますが、SXSWに集まるスタートアップもいわばShowcaseを行っているとみることができます。
お披露目によって見出された若い才能を、プロデューサーに見初められてスターになっていくというストーリーと、スタートアップがメンタリングされファンディングされビジネスを大きくしていく様子は構造が似ています。(そんなに単純でも簡単でもないと思いますが)

■スタートアップ=自主制作映画=インディーズバンド
■ピッチ=上映会=ショーケース
■進化型VC=配給会社=ディストリビューター、音楽プロデューサー

SXSWは26年も昔から構造が変わっていないようです。

未来のビジネスの種を見つけみんなで育てていく。それがBetter Worldに繋がるならなおさらいい。

帰りの飛行機の中で未来予報研究会ではそんな話をして、SXSWらしく、議論したことはイラストにしてみよう(Graphic Recording)ということになりました。

何でも苦手と思わずに挑戦してみようとということで(汗)下手ながら、SXSWで未来のビジネスやアーティスト(苗木)を育てて実らせる様子をイメージ化してみました。

SXSWでおなじみImageThinkさんのモノマネからはじめました。(う~ん…ImageThinkさん、あなたのイラスト素敵すぎでしょう!)

SXSW2015に向けてもう始まっていますが、きちんとした振り返りをということで、SXSW2014シリーズお楽しみください!