SXSW ECO2015では、バイオミミクリー(生体模倣)が一つの大きなテーマでした

バイオミミクリーとは?
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生物・生命を意味する「バイオ(Bio)」と、模倣を意味する「ミミクリー(Mimicry)」の2つの単語をあわせた造語の「バイオミミクリー」。
 言葉としては、まだ一般的には広く知られていませんが、企業や大学の研究開発部門では現在急速に成長している研究分野です。生き物の形や仕組みに学ぶものづくり自体は以前からありましたが、バイオミミクリーは省資源、廃棄物削減、抵抗軽減、機能性向上など、環境負荷が小さく、人間が抱える問題を持続可能なもので解決できるという点から、改めて注目されているようです。

出展:Kids環境ECOワード
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更なる詳細は、SXSW ECO2015にも登壇したJanine BenyusのTEDの動画をご覧下さい!

動画にもあった通り、日本の500系新幹線の先端部分はカワセミを模倣し、パンタグラフの形状をフクロウの羽のギザギザに似せることで騒音を抑えてたりしているそうです。

数十年前から工業デザイン分野でバイオミミクリーの流れはあり、そこまで目新しいと呼ばれているものではないとお考えの方も少なくないと思います。しかしそのバイオミミクリーが、なぜ今見直されてきているのでしょうか?
SXSW ECO2015からみる「2025年、デザインの未来」を予報します!


予報01:賞賛されるデザインのポイントが変わる

私達は、自分達が考えだしたものこそ有効なものだとついつい考えがちです。表現も仕組みも、0から発想しないといけないという固定概念がある人もいるかと思います。
環境問題に関してのアプローチも同じように、自然の流れを食い止めようと必死に”自然と対峙して取り組んでしまう”のは「人間は優れている」という考えが前提となっているからなのかとも感じます。

こちらの動画はNASAが空気中の二酸化炭素濃度のデータを1日毎につなげ、わかりやすくビジュアライズしたものです。赤くなるにつれて二酸化炭素の濃度が濃くなっていきます。


赤いポイントの集中・移り変わりにも驚きますが、一番注目いただきたいのが「春から夏にかけて芽吹く緑たちの光合成の効果」。1分(5月)あたりから2分20秒(10月)まで、大自然がどれほど二酸化炭素の濃度を下げてくれているかが一目瞭然です。

人間が溜めてきた知恵よりも、38億年かけて自然淘汰されて残った優れたテクノロジーやデザインが私達の近くの植物・動物の中に埋まっている…というのがバイオミミクリーの根本だとバイオミミクリーを提唱し続けているJanine Benyus(上のTEDの方です!)は話します。

今までは工業製品の形状を模倣するという活用が多かったバイオミミクリー。
これからはそれをシステムレベルで考えて行く時代ー。都市計画や金融、複雑な社会問題などにもバイオミミクリーの考え方を広げていくフェーズであると彼女は主張します。

2015年:社会のマインドセット完了」でお話ししたように、持続可能でないものは良くないものだ…という考えが定着してきた現代。
自分の感性のままに0からオリジナルに考えて新しい表現をデザインするのではなく、自然の仕組みを理解しそれを創造的に昇華していく姿勢が、2025年のデザインのスタンダードになってくるのではないでしょうか。


予報02:デザイナーの役割が変わる

Janineがファウンダーを勤めているコンサルティング機関Biomimicry 3.8では、AskNature.orgというウェブデータベースを運営しています。
AskNature.orgは、求めている機能を入力すると、その機能を有する動植物の情報や生物学者や参考文献までが検索できるシステムです。
たとえば…”refresh air”と検索すると、鳥類独自に持つ効率的な呼吸器官の仕組みや、枯れアシの高い浄化能力の事など、たくさんの事例が表示されてきます。

asknature
AskNature.orgでは、どんな人でも欲しい機能を有する動植物の情報や研究者の連絡先等を検索する事ができます

また、科学者とデザイナーをバイオというテーマでつなぐデジタルマガジン「ZQ(zygote quarterly)」にも注目です。


2012年より続いているZQの共同創業者であるMarjan Eggermontは、将来的にこのマガジンから昆虫の3Dモデルをダウンロードできるようにして、デザイン教育に使えるようにしたいというビジョンをセッションの中で語りました。

このような様々な領域の人がつながることができるツールが生まれてくる事により、どんどんデザイナーと呼ばれる職業領域は曖昧になっていきます。
現在でも、デザインを職能にする人に求められてくるのはコラボレーションする力だと実感し、新たな動きをしている人は少なくないはずです。

更に、各種サービスや3Dプリンターによってデザインやものづくりが民主化されきった2025年の社会においては、「考えたものが作れて嬉しい」というフェーズは終わり、より「社会との接点があるものを作りたい」という欲求に変化していくはずです。
そのときの典型的な人気者は、必要なものを自分で作れる人かもしれませんね。


予報03:デザインの未来を更新するのは”多様なコミュニティ”

世界中いたるところからバイオミミクリーのアイデアを募集した「Biomimicry Global Design Challenge­」。そのアワードの受賞プロダクトをご紹介します。

1位:The living filtration system(オレゴン州)


ミミズの消化器系等からインスパイアされた排水濾過ツール。
農業に必要な肥料はすべてが植物に吸収されるわけではなく、排水として川から海に流れて赤潮や青潮の原因になり、問題になっています。
微生物(菌)がいる層や人間・ミミズの消化器官を模した層等の多層型のパイプでできており、土壌の中に肥料を留まらせる力を強くして水質汚染を防ぐだけでなく、肥料の削減にも繋がる素晴らしいプロダクトアイデアです。

2位:Jube(タイ)


食虫植物からインスパイアされた新しい”狩り”ツール。
「SXSW2014:ロボット料理長から昆虫食まで?!」http://miraiyoho.com/?p=253でもご紹介したように、今後の起こってくる食糧危機解決のヒントは「昆虫」にあります。
その昆虫を捕まえる知恵を食虫植物から発想を得て作られたプロダクトです。外面のデザインも地域の工芸品のようにして販売する事ができるようにするモデルもとてもユニーク!
もともと昆虫食の文化があるタイだからこそ出てきたデザインですね。

3位:bioNurse(チリ)


劣化した土壌を回復しながら、苗の生長を支援するためのツール。
森林限界をはるかに越える3000m以上のアンデス山脈にしか存在しないヤレータという巨大なコケのような植物にインスパイアされた、高湿性のコケのようなコンテナです。
微生物が住める環境を構築して、紫外線や風などから苗木を守りながら成長助けてくれます。
こちらもチリだからこそ、出てきたアイデアですね。

この3つの受賞プロダクトを見るだけで、そもそも発想する起点が国によって違うことがハッキリ見えてきます。
一方で、これらのプロダクトを継続的にまわす事ができるビジネスモデルを描ける人や、IoT分野に広がるセンシング技術の領域の方などとの出会いがもっと必要です。
自分達のチームにない強みを持った人とフラットにネットワーキング・議論することができるサウスバイらしさはSXSW ECOにもしっかり引き継がれています!一言に多様性と言っても、同じゴールに向かって違う領域・立場で切磋琢磨するメンバーが集まる場をどう作れるかがとても重要なのだと感じました。
今後のプロジェクトの加速していする姿を見るのがとても楽しみです。

こうした様々な境界を越えて混じり合うデザインコミュニティから未来のデザインは生まれてきています。


Janine Benyusは、山ほど語られている環境問題を恐れるのではなく、豊富な使命だと想像を膨らませてデザインで解決に導いていくことで、人間が壊してきたものを”昔の状態に戻す”のではなく、良いカタチで”共生できる次の世界”を作ることができると、皆を励ましましていました。

テクノロジーやエンジニア、ビジネス領域では勉強会やハッカソンやミートアップは日本でも普及してきましたが、デザイナーが少ないという話しもちらほら聞きます。
今後デザインにもその流れがやってくる!むしろその流れに乗らないと取り残されてしまいそうだ…と思ってしまうほど、デザイナー達の意識の進化に驚きました。

また、このようなコミュニティにはJanieのような”尊敬できるリーダー”が必要なのも、改めて痛感したところです。

eco02
デザインの未来に…スタンディングオベーションです!

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参考資料:
・Kids環境ECOワード「バイオミミクリー」
・Challenge Biomimicry
・Biomimicry Global Design Challenge down to final eight